超越する瞬間
人間は、同じことを反復練習しているとそれが当たり前になり、そこがゼロ基準になります。自分がそれを始めた頃や、他人にとってはそれが困難なことでも反復練習を繰り返すうちにだんだんと自然なものになり、頭で考えずとも体が自然に動くようになります。
そしてその先があります。初めは困難だったことが当たり前のゼロ基準になったとき、そこから違う世界が見えてくるのです。それが、超越する瞬間です。
格闘技では
例えば打撃。ワンツーフックやワンツーローのような基本コンビネーションを繰り返しさらにスパーリングを重ねると、相手の一瞬のスキが感覚で分かるようになったり、相手がまだパンチやキックのモーションに入ってないのにどのようなパンチやキックがくるか見えてくるようになります。
寝技でもそうです。相手がやろうとしていることの動きに実際に入る前の段階で、相手の一連の動きから次はこう来ると見えてくるのです。
そう言うスキが見えるとあとはこっちはそのベストタイミングで反復練習しておいた技を出すだけです。かっちり極まります。イメージ的にはガンダムのニュータイプです。
本当の成果
反復練習はもちろんそれ自体の練習ではありますが、その先にそういうもっと広く、意義のある成果を得られるのです。
例えば、私は昔、テニスをやっていました。初めはもちろん初心者なので思うように打ち返すことができませんでしたが、上達し、超越してくるとテニスでも同じ感覚を感じられました。自分のコートが小さく見えてどこに打たれても簡単に返せる、反対に相手のコートは広く見えてボールを打ち込むスキだらけに見えたのです。さらに、自分がボールを打った瞬間に相手がどういうボールを打ち返して来るか分かるのです。
格闘技でも同じです。
相手とのある一連の動きの中で、自分がこう動いているときに相手がこう動くと次に相手はこう仕掛けてくる、というのが見える時があります。いつもは見えない、もっというと今まで見たことのない相手のスキが見えてきます。
スポーツは突き詰めていくと必ずこういう瞬間がやってきます。特にメンタル的にも好調なときと重なると出やすいようです。基礎の反復練習から試合形式の練習まで、一生懸命やりましょう。全く何かを超越したような不思議な感覚を味わえます。